ヒンドゥー教寺院でインド神話の神様を探してみよう!

極彩色の寺院で無数に見られる、ヒンドゥー教の神々の彫像。どんな神様がいるか見分けてみましょう!

こんにちは、シンガポールナビです。インド系の人々が集まるリトルインディアでは、あちこちでヒンドゥー教寺院を見ることができます。極彩色に塗られた南インドの建築様式の寺院には、インド神話の神々の彫像がいっぱい。今日はそれらの寺院をめぐりながら、インドの神様の見分け方をご紹介します。

女神カーリーを祀るスリ・ヴィラマカリアマン寺院

ドゥルガー:
まずはリトルインディア駅に近いスリ・ヴィラマカリアマン寺院から訪ねてみましょう。目抜き通りのセラングーン・ロードに面して立つこの寺院は、女神カーリーを祀ったもの。殺戮と破壊を象徴するなんとも物騒な女神様ですが、悪鬼を滅ぼすほどの圧倒的な強さが信仰の対象となっています。実はカーリーはもともと、戦いの女神ドゥルガーから、激しさや残酷さを凝集して生み出された女神。だからこの寺院の塔門の、下部中央の一番目立つ部分には、ライオンに乗って様々な武器を手にした女神ドゥルガーの像がいます。他にも寺院南西部の外壁の上の屋根などで、ライオンの背にまたがって戦う勇ましいドゥルガー像が見られますよ。
スリ・ヴィラマカリアマン寺院

スリ・ヴィラマカリアマン寺院

塔門下部の中央にいる女神ドゥルガー

塔門下部の中央にいる女神ドゥルガー

寺院南西部の屋根の、戦うドゥルガー

寺院南西部の屋根の、戦うドゥルガー

カーリー:
スリ・ヴィラマカリアマン寺院の主神である女神カーリーは、広間の中央の祭壇に祀られています。お供え物の花飾りをまとったカーリー像はたいへん華やか。でもカーリーは殺戮と破壊の女神様なので、お姿の特徴もなかなかすごいのです。まず肌は青色ですが、これは実際には黒い色を表したもの。ヒンドゥー教では黒は不浄の色なので、黒い肌を表すときは青色を使います。そして口からは小さな牙がはみ出ており、目は血の赤色。手には様々な武器を持ち、生首や髑髏のネックレスを首にかけています。怖い! 祭壇の右手には青い肌に牙をはみ出させたカーリー像が、さらに寺院北西部の3つの屋根の中央右手には、髑髏のネックレスを着けて生首を持ち、舌を出すカーリー像がいます。かなり印象の強い姿なので、ぜひご覧あれ。
カーリーが祀られた寺院内の祭壇

カーリーが祀られた寺院内の祭壇

お供え物の花をまとったカーリー像

お供え物の花をまとったカーリー像

青い肌に牙を出す、祭壇右のカーリー

青い肌に牙を出す、祭壇右のカーリー

迫力!髑髏のネックレスを着けて舌を出すカーリー像

迫力!髑髏のネックレスを着けて舌を出すカーリー像

寺院北西部の3つの屋根が並ぶ中央の部分にいます。

寺院北西部の3つの屋根が並ぶ中央の部分にいます。

シヴァ:
女神カーリーの本体である女神ドゥルガーは破壊神シヴァの妻・パールヴァティーのもう一つの姿とされています(ちょっとややこしいですね)。だからスリ・ヴィラマカリアマン寺院では、夫であるシヴァの像もあちこちで見られます。ヒンドゥー教の三最高神の1人であるシヴァは、破壊と創造の神。舞踏の神様としても有名で、小鬼の上で踊るシヴァの姿を、広間の左手の金色のレリーフや祭壇左横の彫像に見ることができます。シヴァの姿の特徴は、三日月の髪飾りや毒蛇のネックレス、退治したトラの皮をはいだ腰巻き(よく見るとヒョウ柄っぽいんですが…)などを身につけていること。髪を伸ばしてぐるぐると巻いた修行僧の姿をしており、額には第三の目が開いています。寺院北西部の3つの屋根の左部分には、第三の目から光の矢を放つシヴァの像がいます。これはシヴァが怒りを覚えたときに、世界を焼き尽くす炎なのだそうです。まさに破壊神の力!
寺院の左の壁の踊るシヴァのレリーフ

寺院の左の壁の踊るシヴァのレリーフ

祭壇の左横にいる踊るシヴァ像

祭壇の左横にいる踊るシヴァ像

寺院内右手の祠の上のシヴァ像

寺院内右手の祠の上のシヴァ像

第三の目から光の矢を放つシヴァ。迫真の表現。

第三の目から光の矢を放つシヴァ。迫真の表現。

南西部の屋根のシヴァ像。頭から出た顔は女神ガンガー。

南西部の屋根のシヴァ像。頭から出た顔は女神ガンガー。

ガネーシャ:
数多いヒンドゥー教の神様の中でも、最も見分けやすい神様がガネーシャ。ゾウの頭に人間の体を持つ、富と学問を司る神様です。元は女神パールヴァティーが入浴したときの垢から作り出された人形で(日本の昔話の「力太郎」に似ていますね)、命を吹き込まれてシヴァとパールヴァティーの子供になりました。しかしあるときシヴァの怒りを買って、頭を切り落とされてしまったのです! その後、我に返ったシヴァの手で通りがかりのゾウの頭を付けられて生き返った・・・という数奇な運命に見舞われた神様です。寺院の広間の祭壇のうち左側にガネーシャが祀られており、天井近くの壁にその不思議な姿を見せています。よく見ると右の牙が折れており、自分の手で牙を持っているのがわかります。夜道で転んだときに月に笑われたため、自ら牙を折って月に投げつけた、という説が有名。寺院の塔門や、外壁のくぼみでも、ガネーシャのユーモラスな姿が見られますよ。
塔門の左手、下から二段目にいるガネーシャ像

塔門の左手、下から二段目にいるガネーシャ像

寺院内の左の祭壇にいるガネーシャ。牙を持っています。

寺院内の左の祭壇にいるガネーシャ。牙を持っています。

ヴィシュヌを祀るスリ・スリニヴァサ・ペルマル寺院

ヴィシュヌ:
スリ・ヴィラマカリアマンの後はセラングーン・ロードを北上して、スリ・スリニヴァサ・ペルマル寺院に行ってみましょう。ファーラー・パーク駅に近いこの寺院は、ヒンドゥー教の三最高神の1人であるヴィシュヌを祀ったもの。ヴィシュヌは世界を維持する力を持つ神で、額にはU字型のマークがあり、手には法螺貝を持っています。ヴィシュヌがこの法螺貝を吹き鳴らすと悪魔が震え上がるといわれる、強力なアイテムです。そしてびっくりしてしまうのが、とぐろを巻いた蛇(アナンタ蛇王)の上で寝ていること。この世はヴィシュヌの夢に過ぎず、ビシュヌが目覚めれば一瞬で消えてしまう、ということを表しているんですって。塔門の左手の壁の上と、寺院の広間の祭壇の上に、蛇の上で寝ている姿のヴィシュヌ像があります。
スリ・スリニヴァサ・ペルマル寺院

スリ・スリニヴァサ・ペルマル寺院

塔門左側の壁、蛇の上のヴィシュヌ像

塔門左側の壁、蛇の上のヴィシュヌ像

入り口のすぐ上にいるヴィシュヌ像

入り口のすぐ上にいるヴィシュヌ像

寺院内の祭壇中央で、蛇の上で寝ているヴィシュヌ像

寺院内の祭壇中央で、蛇の上で寝ているヴィシュヌ像

寺院後方のお堂の屋根のヴィシュヌ像。手には法螺貝が。

寺院後方のお堂の屋根のヴィシュヌ像。手には法螺貝が。

クリシュナ:
維持神ヴィシュヌは「アヴァターラ」と呼ばれる10の化身を持っています。Web上で利用されるキャラクターの「アバター」は、これが語源です。そのヴィシュヌの化身の中でも最も有名なのは、美青年の神様クリシュナ。叙事詩「マハーバーラタ」の主人公で、青い肌に孔雀の羽のついた冠をかぶり、手には笛を持っています。額にはU字型のマークがあり、これはヴィシュヌに連なるものであることを示しています。美貌で笛の名手のクリシュナは女性にモテモテ。そのため数多くの恋愛譚があり、インドではとても人気の高い神様です。この寺院では、塔門正面や塔門の左手の壁の上、入り口のすぐ上など、至るところで笛を手にしたクリシュナの姿を見ることができます。
塔門の左手の壁の上にいるクリシュナ像(右)

塔門の左手の壁の上にいるクリシュナ像(右)

入り口のすぐ上でヴィシュヌらと並ぶクリシュナ像(右)

入り口のすぐ上でヴィシュヌらと並ぶクリシュナ像(右)

ラクシュミー:
この寺院の主神ヴィシュヌの妻は、女神ラクシュミー。だからラクシュミーの像もあちこちで見られます。美と富と幸福を司る女神ラクシュミーは、蓮の花の上に乗った絶世の美女。両手にも赤い蓮の花を持ち、背後には2匹のゾウを従えていることもあります。実はラクシュミーは仏教にも取り入れられており、日本でいうところの吉祥天は彼女なんですよ! つい親近感が湧いてくるラクシュミー、この寺院では入り口近くの左の柱や、広間の祭壇に面した天井近くの壁、東側にあるラクシュミーを祀ったお堂で、その姿を見ることができます。
入り口近くの柱のラクシュミー

入り口近くの柱のラクシュミー

祭壇に面した壁のラクシュミーとゾウ

祭壇に面した壁のラクシュミーとゾウ

ラクシュミーを祀るお堂

ラクシュミーを祀るお堂

巨大な彫像に圧倒されるスリ・バダパティラ・カリアマン寺院

スリ・スリニヴァサ・ペルマル寺院の後は、セラングーン・ロードをさらに北上して、スリ・バダパティラ・カリアマン寺院まで足を伸ばしてみましょう。横に広いスタイルの華麗なファサードを持つこの寺院は、スリ・ヴィラマカリアマン寺院と同じく女神カーリーを祀っています。カーリーは広間の祭壇の中央に祀られ、左手の回廊にはカーリーと関連がある女神ペリヤッチの像があります。この女神像がとっても怖い! パンドヤ王国の王を踏みつけ、王妃のお腹を裂いて内臓を食べるという、伝説の1シーンを再現しています。インドの神話の激しさにびっくりしてしまいます。
スリ・バダパティラ・カリアマン寺院

スリ・バダパティラ・カリアマン寺院

女神カーリーを祀った祭壇

女神カーリーを祀った祭壇

女神ペリヤッチの像。怖い!

女神ペリヤッチの像。怖い!

ムルガン:
寺院の広間に並ぶ3つの祭壇のうち、右側のものは軍神ムルガンを祀ったもの。ムルガンはシヴァの息子で、スカンダとも呼ばれています。ムルガンは生後たった4日で、雷を司る神インドラから軍神の地位をもらったほどの力を持つ神。槍を持ち、孔雀に乗った少年として表される神様です。だから他のヒンドゥーの神々よりも、外観がちょっと若々しい感じ。この寺院では、祭壇の内部にアラバスターの美しいムルガンのレリーフがあり、その上には槍を手にしたムルガン像が座っています。表のファサードの右側にも、孔雀にまたがったムルガン像がいますよ。
祭壇の中のムルガンのレリーフ

祭壇の中のムルガンのレリーフ

祭壇の上に座るムルガン像

祭壇の上に座るムルガン像

ファサードの右側のムルガンと孔雀

ファサードの右側のムルガンと孔雀

ハヌマーン:
この寺院のファサードの右手の扉の両横には、巨大なサルと翼が生えた人の彫像が立っています。右のサルの彫像は、叙事詩「ラーマーヤナ」で活躍したハヌマーン。ヴィシュヌ神の化身であるラーマ王子を助けた、強い戦士のサルです。ハヌマーンは孫悟空のモデルとも言われているんですよ。この彫像の右上にも、ラーマ王子に仕えるハヌマーンの彫像があります。

ガルーダ:
左の彫像は神鳥ガルーダ。ガルーダはヴィシュヌの乗り物で、人間の胴体と鷲の頭や翼、爪を持った鳥として知られています。ときに人間に翼が生えた姿で表されることもあり、これはまさにそんな姿の彫像です。何だか天使みたいですね。
ハヌマーンの彫像

ハヌマーンの彫像

ラーマ王子に仕えるハヌマーン

ラーマ王子に仕えるハヌマーン

ガルーダの彫像

ガルーダの彫像

多くの神々が織りなすインド神話の世界、まだまだ書ききれない神様がいっぱいです。でも、少しでも知っている神様がいると、ヒンドゥー教寺院の観光はとても充実したものになります。リトルインディアを訪れるときは、ぜひ参考にしてみてくださいね。以上、シンガポールナビでした。

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2011-07-22

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